家族

わりと最近に自分の中でも大きめの事件があり、

ここ数か月は自分の中でも気持ちの整理ができないでいる。

 

若い時からしゃにむに働き、人との差別化を図る努力をしてきたが、

いまとなってはそればかりに注目し、大切なものを見失ってきたのかもしれない。

 

私の中でのクライシスは約5年に1度の頻度で経験してきているが、

今回ほどの大きさはいまだ経験がない。

 

いまの私にとっての救いはYouTubeで語る苦労を経験してきた人たちの言葉。

まず安藤忠雄に始まり、スティーブ・ジョブス、精神科医の樺澤紫苑などを

朝に散歩をしながら見ることにしている。

 

しかしそのうちに、

新聞の社会面に出てくるような事件に巻き込まれてしまった人たちや、

または期せずして加害者になってしまって、その後の人生をやり直そうと

苦労している人たちの話に魅了されるようになった。

その人たちがたまに語る言葉が、自分は助けられて生きている、

という言葉であった。

 

私は一度離婚し、再婚した。

今の妻にも前妻にも少なくとも経済的に苦労をかけまいと一生懸命働いてきたが、

息切れしてしまいそうな自分に失望し途方に暮れていることを正直に家内に告げると、

「何をしていても生きていけるから大丈夫、カツカツだって家族と一緒にいられれば幸せ」

と一言だけ言って、あとはにっこりとほほ笑んで慰めてくれた。

 

私は自分が間違っていたことを改めて知った。

大事なのは物質的な豊かさではなく、精神的な結びつきや家族の愛情だった。

それ以降、私の鬱屈した状態は少しずつ晴れ、

いまはこうして文章が書けるようにまで回復している。

 

私は自分で生き抜こうとしたが、実は生かされたことを知り、

家族に対するまなざしをしっかり持てるようになった。

それは得難き教訓であった。