家族

私の親はまだまだ健在だがそれでも歳には勝てないようで、以前のように遠方まで食事に行ったり買い物に行ったりという感じではなくなってきた。その状態を見かねた彼女が私の親の代わりに食事を作ってくれるようになって早くも1年経った先日、皆で食事をしている時に私の父親が彼女に対して私と結婚する気はないかと訊いた。彼女は小さい声で恥ずかしそうに「あります」と言った。それを受けて父親は、これで思い残すことはなくなった、ありがとう、とだけ言った。私は驚きのあまり何も言えなかったが、その後は話題が変わったこともあり、そのまま食事をしていた。

 

父としては離婚して独り身になった私を心配してのことであっただろうが、これで再婚に躊躇していた私の人生の方針が一気に決まってしまった感じとなった。仕事が順調に軌道に乗ってきたこともあり、先日は実家の近くにマンションも購入した。これで私が仮に死んでも、年の離れる彼女に遺してあげられるものができたと思って少し安堵した。

 

そう思ったところで、私は私の父と似た心配を彼女に対してしていることに気が付いた。