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「いらない課長」は誰か

満員電車の中で「いらない課長」という本を読んでいる年配の男性が目の前に立ち、ページを前後させては時々ペンで何かを書き入れている。恰幅の良さからしておそらく会社の役員か部長職なのだろうが、こうした本を読んでいる人の視点が気になったため、少し考えてみる。

 

まずは「いらない課長」はその人にとっては部下であることが想定される。自分が日々困っているのはいらない課長が至らないからであるが、自分はいらない課長であったことはないため、いらない課長になるような人の気持ちを忖度することができないというものである。したがっていらない課長の経験がある、またはいらない課長に苦しめられたことがあって、いらない課長の気持ちが分かる人が書いた本を読む必要があるということだろうが、そもそもそういういらない課長を指導できない、または直接ぶつかる気概もない「いらない上司」は私ではないだろうかという点において、自己客観性は相当に弱い可能性がある。

 

ふたつめの可能性は、自分こそ「いらない課長」であると認識している人であるが、自分が「いらない課長」だと思われることには非常に敏感であろうから、満員電車で本のカバーもなくこれ見よがしに読むことはないだろうと思う。家でこっそり読むに違いない。
 
みっつめの可能性は、「いらない課長」である人の境遇や待遇を詮索したくなる人であるが、こうした人は対岸の火事としてこうした本を読みたいと思う一方で、自分も一歩間違えば「いらない課長」と思われる可能性がある、または実際にそうなる可能性があるから本に関心を持つのであって、要するにあまりメインストリートを歩くような人ではないと思われる。
 
ということを考えながら会社に到着すると、自分の同僚が同じ本を持っていた。聞けば結構売れている本で面白いのだという。私は突然延髄斬りをされたような衝撃を受け、眩暈を理由に午前中に予定していた会議をすべてキャンセルして部屋に篭った。